『ロコ!思うままに』 ★★★★
著者:大槻ケンヂ
出版:角川書店
何か小説を読みたいなぁと思ったら、
書店でつい見つけてしまったオーケンの小説本。
オーケンはやっぱエッセイが面白いよなぁ、と思いつつ、
たまにはいっかと思って買ったら、期待していなかったせいか
思いのほか面白かったです。
短編集で、それぞれに一人称だったり三人称だったりしますが、
基本的に主人公視点でセリフが多いので、内容さえ許容できれば(笑)
読みやすいと思います。
それでも、やはり独特な世界観なんですよね

舞台は現代だけどもファンタジーな部分が多いし、
グロい部分も多いと思います。
ホラーに近いものもありますね……
第二章の「キテーちゃん」は最後ホラーっぽかったです。
時々、暗くてどうにもならないと思うほどしんどい夢を見ますが、
オーケンの小説はまるでそんな雰囲気があります。
現実っぽいのに現実では起こり得ない、常識では測れない、
精神的に追い込まれるものがある、だけど先が見えなくて、
それ故にどう転ぶか分からない、時々笑えて時々悲しい……そんな感じ。
それプラス、目を覆いたくなるシーンも多いですが

今まではオーケンの小説はそういう印象だったんですが、
今回は更に感心・感動・笑いがありました。
第二章の「怪人明智文代」は、江戸川乱歩の話だったんですが、
江戸川乱歩の小説をすごい読み込んでるっぽいな、
という感じが伝わってきました。
全くの想像(オーケンの妄想)なのか、他でもそういう話が
されているのかどうかは、今まで江戸川乱歩に興味を持たなかった
自分には分からないんですが、その真偽を確かめたいと思うほど
興味深かったです。
江戸川乱歩の小説を読みたくなりました。
あと、同じく第二章の「イマジン特攻隊」ですが、
これは映像と音楽つきで見たかったかなと。
私は音楽にそれほど興味がないので、なかなか音楽だけで興奮する!
というのが無く、共感できることが少なくて……
でも、ロックとか知らない人が自分でそれを見つけ、
その感動が小説の中の独特な舞台で描かれていて、
それが流石だなと思いました。
第三章の「戦士の名は赤ちゃん」は、すごく面白かった!!
オーケンの小説で初めてこんなに笑ったかも知れない、
というくらい面白かったです。
赤ちゃんはつまりサイボーグなんですが、
その赤ちゃんと主人公モーケンとのやりとりが笑えました。
見た目赤ちゃんが大人びたこと言うのが面白いのかな?
「あばば」とか「やはやは」とかの口癖も気に入りました(笑)
出来ればもっと読んでいたかった話でした。
最後の「天国のロックバス」はちょっと感動です。
タイトルの副題(?)が「ロコ! もう一度思うままに」で、
第一章の1話目「ロコ! 思うままに」から繋がってるのかなと
思ったんですが、少女と少年の名前だけ(少年はあだ名なのかな?)が
一緒だというだけで、キャラクターは全然別みたいな……
でも、繋がってる気がしてならないです。
また、ロックに対してのこだわりというか、
想いというのもよく伝わってくる話でした。
オーケンはロックやUFOや江戸川乱歩や、
自分の好きなものに対する知識も豊富で、
さらに自分なりのこだわりというのを小説から
感じられるような気がします。
だから、小説なんだけどもエッセイ的な雰囲気もあって、
他の作家さんよりもダイレクトにオーケンの考えてることが
伝わってくる、という感じがします。
それはオーケンがもとは作家さんじゃないから、
というのもあると思いますが、だからこそのオーケン独特な雰囲気が
小説にはあって、それが時々やたらに筋少聴きたいなと思うような、
忘れがたく癖になるようなものがある気がします。
この小説もまた、いつか読み返したいと思える作品でした。