『源氏物語 千年の謎』 ★★★
監督:鶴橋康夫
脚本:川崎いづみ、高山由紀子
原作:高山由紀子 『源氏物語 悲しみの皇子』
出演:生田斗真、中谷美紀、窪塚洋介、東山紀之、真木よう子、多部未華子、ほか
なぜだろう、子供の頃から紫式部が好きで、中学の頃には現代語訳されたものであっても読み辛い、古典『源氏物語』を四苦八苦しながら読んでた記憶があります。
国語は好きだったけど古典は苦手で、時代背景もそれほど詳しいわけでもなく、しかも主役の光源氏がいろんな女性と付き合うという、女性から見たら「こいつは敵だ」と思われても仕方ないような物語なのに……なぜだか惹かれるのですよね。
そんなわけで、これは見ないわけにはいかないと行って来ました映画館。
予告で「物語の世界と現実の世界が交錯する」的なことを言ってたので、サスペンスという面でも楽しめるのかなと、その点でも期待してました。
実際、観た感想として思ったのはサスペンス要素はそれほどなかったのだけど、この映画で伝えたいと思っているだろうことは感じとれたし、言葉ではなく描写としてそれがよく伝わってきたと思います。
とくに御簾越しの会話の場面では、互いの、あるいは一方のやるせないようなもどかしいような気持ちが、映像として見るとよく分かりました。
この時代、男女が御簾越しで会話するのが一般的だと小説や漫画では知っていたのですが、こんな風に映像としてはっきりと見るのは(たぶん)初めてで、当時の御簾が映画で使われている御簾と同じものかどうかは分かりませんが、こんな風に見えるんだなと興味深く思いながら観てました。
そして互いの感情を意識しながら見ると、御簾というアイテムが実は重要なんじゃないかと感じられるんですよね。
それから、紫式部と藤原道長の関係も、『源氏物語』の作中の六条御息所と光源氏に重ねられいて、少々の違和感はありますが「なるほどな」と納得させられました。
また、式部の感情の部分は作中で表現されているからか、式部本人から語られることがほとんど無いんだけども、わずかな表情や仕草から伝わってくるのがすごい。
ところで、昔に原作を読んだおぼろげな印象として、映画の中の光源氏は原作の光源氏よりも誠実に見えたなと思います。
これはもうホント記憶が曖昧なのではっきりとは言えないのだけど、映画の中の光源氏は原作と同じように複数の女性と付き合ってるはずなのに、とても誠実な男性に見えるのが不思議。
俳優の持つ雰囲気もあるのかも知れないけど、多くの人が(女性が)『源氏物語』に惹かれるのはこういうところなのだろうか? と思いました。
私は原作を読んでそれは感じとれなかったので、『源氏物語』惹かれたのはそこじゃないと思うんですけどね。
そして俳優・女優ですが、ほぼ完璧っていうくらい非の打ちどころのない配役で、演技も素晴らしかったです。
とくに東山さんは普段の印象と違う道長という人物を、私はまったく違和感なく観ることができました。
光源氏の生田さんも誠実な光源氏を演じてて、当時の美男子ってこういう容姿ではないんだろうなぁと思いつつ(笑)、現代の美男子“光源氏”としてはハマってたと思います。
それから、女優の方たちも美しくて素敵でした。
とくに六条御息所を演じられた田中麗奈さんが、美しさと演技とで魅了されてしまいました。
嫉妬と愛憎で浅ましい姿を見せつつ、そんな自分に苦悩するという演技に思わず感情移入してしまうほどです。
あと、葵の上を演じられた多部未華子さんも、あの時代の衣装が似合っていて可愛かったです。
演技も、おぼろげな原作の印象と比較するのはアレですが、違和感なく見れました。
(続く)
