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著者:保坂和志
発行:中央公論新社
驚くほど何も起こらない、ただ過ぎていく日常が綴られているだけの小説です。
――こう書くと、「ツマラナイ小説」と思われるかも知れませんが、実際に読んでみると物語の中に引き込まれて行って、スイスイと読み進めることが出来るんです。
こんなに何も起こらない小説を、面白くないと思わないことに自分でも不思議だな、と思うんですが、その要因のひとつには主人公の一人称で語られているということが挙げられるのかなと思います。
つまり、とても読みやすいんですよね。
格式ばってない文体や、くだけた感じのある文章、難しい言葉はほとんど無くて、回りくどくもなく、すんなりと頭の中に入ってくる感じがします。
以下抜粋してみました。
『電話に出たゆみ子は三年前と変わらず、別に機嫌が悪いわけではないのだけれど愛想もないしゃべり方をしてきた。「久しぶり」などと通りいっぺんの挨拶のようなものを言い合い、次に「どうしてる?」という話になって、結婚はしていないけど子どもを一人つくったと聞かされて、へえと思ったから「へえ」と言い、それがすぐになるほどに変わったから「なるほどね」と言って、そのうちに猫の話になった。』
気取らず飾らない文章で実に読みやすいと思います。
「へえと思ったから〜」の辺りなどは読みながら少々驚きましたね

小説でこういう書き方もあるんだなぁと。
それから、登場人物が“普通”なところも親しみが感じられて良かったのかなと思います。
例えば――
ある日主人公が部屋を掃除していると子猫が窓から覗いているのに気付いた。主人公は仔猫になんとか近づこうとするがすぐに逃げられてしまう。仔猫が来て、近づこうとして逃げられて――それを何度か繰り返したあと、ニボシで仔猫を釣って仲良くなろうと思いつく。思いついてすぐにコンビニに行くがニボシが見つからない。アルバイトの男の子に聞いてみたら、「ニボシってなに?」というような顔をされて、それで初めて主人公も気恥ずかしくなって家に帰った――。
主人公は次の日、帰り道に乾物屋を見つけてニボシを買うんですが、そういった行動や思考は自分と(一般の人と)ほとんど変わらないんじゃないかと思えます。
だから、読んでいても違和感無く飲み込めるのではないかと。
ただ、「何も起こらない小説」でしたが最後、終わりまで読んだときには「驚き」がありました。
以前、保坂さんの本で『書きあぐねている人のための小説入門』というのを読んだとき、そこに「小説はどこから始めても、どこで終わってもいい」というようなことが書かれていたんですが、その実例をまさに『プレーンソング』で体感したな、という感じです。
これは実際に読んで体感して欲しいなと思います。ちょっと驚きます。私は驚きました。
――と、けっこう好意的に書いてきましたが、評価は普通でした

文の雰囲気とか好きなんですが、やはりコレというものが無かったので・・・。
『プレーンソング』はデビュー作だということで、今度は芥川賞を受賞した『この人の閾』を読んでみたいと思います。
これもレビューを見ると、なんだかスゴイ作品みたいです・・・。
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